「決して道をそれないように」
お母さんから強くいわれていた赤ずきんちゃんですが、小鳥のさえずりや枝葉の奏でる音色に呼ばれるように脇道へと入ってしまいました。
少しひらけた場所では、あたり一面に白い百合の花が咲き乱れていました。ほんのりと甘い優しい香りに包まれ、とても幸せな気持ちになりました。
赤ずきんちゃんはおばあさんにプレゼントするために、百合の花をそっとカゴの中に入れました。
気が付くと元の道がわからなくなってしまった赤ずきんちゃん。しばらく歩き回っていましたが、少し疲れたので木陰で休むことにしました。
お日様もてっぺんに登り、お腹の空いた赤ずきんちゃん。お昼に渡されたパンを食べる場所を探しはじめました。
木の橋を渡ると、後ろからすーっと風が吹き抜けました。背中をおされるように進んでいくと、大きな木が倒れている場所につきました。ちょうどいいので、ここでお昼にすることにしました。
少しお腹も満たされると大切なことを思い出しました。「森にはオオカミが出るから気をつけて」おかあさんから送り出される時にいわれました。
ふと後ろに気配を感じて振り返りました。しかし、そこには何もありません。
それまで明るくキラキラした森がどこか静かに不気味に感じるようになりました。
急いでカゴをつかんで、赤ずきんちゃんは小走りで森をかけていきました。
一生懸命に森の中を走り抜けた赤ずきんちゃん。急な坂をのぼると、森がひらけ見慣れた道に出ることができました。
ほっとした赤ずきんちゃん。お母さんのいいつけはしっかり守ろうと心に決めました。